2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻を開始。歴史的な大事件に世界中が驚きました。その影響を直接受けたのが原油です。原油価格の国際指標であるWTI原油先物は一時、1バレルあたり130ドルまで高騰。世界屈指の産油国であるロシアの供給懸念が広がりました。
2020年3月のコロナショック時にはマイナス価格を付けた原油が約2年で100倍以上の価格を記録するほど、原油はボラティリティが非常に高い商品です。この値動きに投資したいという方も多いかと思います。
原油に投資する方法はいくつかありますが、その中でもETFは通常の株式と同じように手軽に購入できる金融商品です。1口あたりの投資金額も低く設定されているため少額資金でも原油に投資が可能です。もっとも、原油ETFには注意すべきポイントがあります。
この記事では原油ETFの注意点やデメリットを詳しく解説。もう一つの投資方法であるCFD取引についても紹介しています。原油に投資をお考えの方はぜひご一読ください。
原油ETFは取引コストが安く投資できる
ETFは上場投資信託といい、東京証券取引所などの取引所に上場されている投資信託です。一般的な投資信託は証券会社の窓口に行き、購入の手続きをする必要がありますが、ETFはネット証券会社を利用すれば自宅で簡単に購入が可能です。
原油先物連動するETFも多数上場されており、一口数千円から購入できます。購入方法は株式の買い方と同じです。楽天証券などのネット証券では取引手数料が無料になっている銘柄もあり安いコストで原油に投資ができます。
東証上場の原油ETFで代表的なのは「NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信(1699)」や「WTI原油価格連動型上場投信(1671)」です。
これらの銘柄を「安いときに仕込んで原油価格が上昇したら売ろう」と考えている方は要注意です。原油ETFは一般的な株式のETFとは根本的に違う特徴があります。
原油のETFが長期保有に向かない理由
結論からいうと、「原油ETFは長期で持てば持つほど利益を出すのが難しい」からです。
原油の先物取引は1か月ごとに取引期限がある
原油ETFは先物型ETFと呼ばれ、原油先物の価格に連動した運用成果を目指します。先物取引は将来に決まった価格で売買することを現時点で約束する取引です。
原油の先物取引では1か月単位で取引期限が決められており、1月限、2月限といった形でそれぞれの銘柄に取引期限(限月)が設定されています。
企業活動として原油を取引している実需企業は限月を迎えたとき、原油の現物を受け渡ししますが、個人投資家が原油の現物をやり取りすることはほぼ不可能です。
原油ETFは毎月、限月の乗り換えがある
そこで、個人投資家が現物の受け渡しをぜずに原油の価格変動に投資できるようにしたのが原油ETFです。原油ETFは限月の近い銘柄(期近)と先の銘柄(期先)があり、限月を迎えるときに期限の長い銘柄に乗り換え(ロールオーバー)を行います。
このロールオーバー時に原油ETFが長期保有に向かない理由があります。それは原油がコンタンゴする商品だからです。
原油ETFのコンタンゴ
コンタンゴとは期近の先物価格よりも期先の方が高い状況のことをいいます。
原油は保管にコストのかかる商品です。原油をそのままで保管はできず、海上タンカーや陸上の貯蔵タンクで保管します。株式や株価指数は保管コストがありませんが、原油のように保管コストがかかる商品は取引期限が先の銘柄ほど保管コストが上乗せされた価格となります。
したがって、基本的には期限が近いものほど安く、期限が先のものほど価格が高くなります。これがコンタンゴです。ちなみに、長期スパンで過去の原油先物価格をプロットするとほぼコンタンゴになっています。
原油ETFは長期保有すると減価していく
原油ETFは長期的にレート配信をするためロールオーバー(限月の乗り換え)をします。しかし、原油は基本的にコンタンゴ(期近の先物価格よりも期先が高い)のため「同じ商品を安く売って、高く買うを繰り返す」ことになります。
つまり、コンタンゴの状況では限月を乗り換えるたびに減価していきます。長期スパンでこれを繰り返すと原油ETFと先物価格は次第に乖離していきます。
上記はWTI原油先物と東証上場の原油ETF(1699)の過去10年の価格変動を比較したチャートです。
一目瞭然ですが2020年以降、原油の先物価格が上昇しても原油ETFは同じように上昇していません。もちろん、原油の先物価格が上昇すれば原油ETFの価格も上がりますが、コンタンゴした分(期近と期先の価格差分)は上昇に歯止めがかかります。
これが原油ETFは長期保有に向かない理由です。株式と同じように長期保有していれば株価上昇分だけ利益を獲得できるわけではありません。
特に、保有時よりも原油価格が下がった場合に「長期保有して塩漬けしていればいつか戻るだろう」と思っていると損失が拡大していく可能性が高いので注意が必要です。
コンタンゴの逆はバックワーデーション
逆に、期近の先物価格が期先よりも低い状態のことをバックワーデーションといいます。将来の価格変動が予測できないときやOPECが減産を行い需給を引き締めているような状況では先物価格が逆転します。
現在の価格よりも原油価格が下落すると市場が判断しているときは期近の先物価格が上昇します。これがバックワーデーションです。
「コンタンゴの逆ならバックワーデーションのときに原油ETFを買えばいいんじゃない?」と思われた方もいるかもしれませんが、これも推奨できません。
バックワーデーションになるということは、市場が将来的に原油価格が下がると見込んでいるときです。買いポジションでは保有時よりも原油価格が下がる可能性があります。いずれにしても原油ETFは長期保有には向かない商品といえます。
原油は長期保有よりCFDで短期トレードが最適
原油は長期保有よりも短期トレードに向いている商品です。限月の乗り換えが行われない1か月間で短期的に値幅を取りにいく取引方法が最適です。
とはいっても、1か月で動く値幅には限界があります。特に、レバレッジがかからない現物の原油ETFでは値幅を効率良く利益にすることができません。
そこで、おすすめなのが原油のCFD取引です。CFD取引とは、差金決済取引のことで現物をやり取りせず売買代金の差額のみをやり取りします。
最大20倍のレバレッジで少額からでも取引がスタート可能
取引手数料が無料、少額の場合はスプレッドコストも安い
取引方法が分かりやすく売買しやすい、要領はFXと同じ
取引時間が長い、ほぼ24時間いつでもポジションが持てる
原油のCFD取引では、最大20倍のレバレッジをかけることが可能です。レバレッジはかける分だけハイリスクハイリターンとなりますが、資金に見合ったポジション量を持てば十分にリスク管理が可能です。
原油CFDであれば、GMOクリック証券のように取引手数料が無料かつ実質的な取引コストとなるスプレッド(売値と買値の差)も狭い業者を利用することできます。
CFD取引でも、継続的なレート配信のためロールオーバーが実施されます。このロールオーバー時に価格調整額というコストが発生するため、ETFと同じように調整額がかからないデイトレードやスイングトレードがおすすめです。
GMOクリック証券のWTI原油CFDが取引しやすい
原油のCFD取引ならGMOクリック証券が取引しやすく初心者におすすめです。GMOクリック証券では100種類以上のCFD銘柄に対応。取引ツールが使いやすくCFD未経験でも簡単にWTI原油のCFD取引が可能です。
上記は、GMOクリック証券のPC版Webブラウザ版ツールの取引画面です。WTI原油を選択して売り/買いの選択、取引数量を決めるだけで発注が可能。
取引手数料は全CFD銘柄で無料です。スプレッドが取引コストとなりますが、GMOクリック証券は安定して狭いスプレッドを配信しているのも特徴です。
GMOクリック証券の原油CFDに関しては、別記事でより詳しく解説しているので気になる方はぜひご一読ください。
上記でも簡単に解説しましたが、原油CFDでは価格調整額という調整額で限月の乗り換えを行っています。
コンタンゴの場合、買いポジションではマイナス、売りポジションではプラスとなります。実際には価格調整額でマイナスになった場合でも、その分のレートが上昇するため実質的な損益は変わりません。
ただし、CFDでもETFと同様に長期保有すればするほど先物価格と乖離がするため注意が必要です。
GMOクリック証券では、ツール上でいつ価格調整額が発生するのか、プラスなのかマイナスなのかを簡単に確認することができます。
上記の例では期近より期先の先物価格が高いためコンタンゴです。コンタンゴの場合は売りポジションでプラス、買いポジションでマイナスの価格調整額が発生します。
過去の利益を参照することもできます。2022年は米国の金融引き締めから景気停滞が懸念され、原油の需要減少⇒期先の価格が下がる傾向にあったため1年を通してバックワーデーションの状態でした。
原油の先物価格はコンタンゴなのかバックワーデーションなのかで状況が変わります。予測できない将来の値動きにETFで投資するよりもCFDの短期トレードで足元の値動きを捉える方がおすすめです。
GMOクリック証券の原油CFDは注目ポイントがたくさんあります。原油への投資でしっかりと利益を狙いたい方はぜひご注目ください。