この記事では、TradingViewのマーケットプロファイル(タイム・プライス・オポチュニティ)について見方と使い方を解説しています。
トレーディングビューのマーケットプロファイルは細かい部分で独自の仕様が施されています。各用語の説明、具体的な使い方も交えつつ解説しているので参考にしてみてください!
TradingViewのマーケットプロファイル(TPO)とは
マーケットプロファイルは主にシカゴ商品取引所(CBOT)の先物・コモディティ市場で発展した相場分析手法の1つです。
1980年代にJ・ピーター・スタイドルマイヤー氏によって考案され、現在ではあらゆる分野で広く活用されています。日本では日経先物の分析にも利用されます。
マーケットプロファイルは時間経過による価格変動を直感的に捉えられるのが特徴です。どの価格帯でより多くの時間が費やされたか、その範囲はどこまでかといった判断に役立ちます。
全体の形をパターン化し、価格分布から短期トレーダーと長期トレーダーの動向を推し量ることも可能です。マーケットプロファイルの見方が分かると相場分析の幅が広がります。
TradingViewのマーケットプロファイルはPremium限定
プラン名 | 月次(月額) | 年次(年額) |
---|---|---|
Premium | 59.95ドル | 599.40ドル |
9,000円 | 89,900円 |
マーケットプロファイルの解説をする前に重要なポイントが1つあります。
それは、「有料プランのPremiumプラン限定の機能」という点です。トレーディングビューの有料プランは3種類ありますが、個人向けの最上位プランであるPremiumでしかマーケットプロファイルは利用できません。
全有料プランの詳しい解説は別記事にて詳しく解説しているので、そちらもご参照ください。
【毎月更新】トレーディングビューの有料プランはどれがおすすめ?
TradingViewのマーケットプロファイルがチャートタイプとして選べるようになりました。チャート設定からブロックサイズ、期間、デザインを細かく設定できます。
以前まではインジケーターとして追加していたので上限数にカウントされましたが、チャートタイプは上限数にカウントされません。
Premiumプラン限定である点は注意が必要ですが、ますます便利になるTradingViewのマーケットプロファイルは注目です!
マーケットプロファイルの表示方法
では、マーケットプロファイルの表示方法から解説していきます。
トレーディングビューのチャート画面を開き、上部メニューの「インジケーター」をクリック。検索窓に「TPO」と入力すると表示されます。
同じポップアップの左サイドバー「テクニカル」から「プロファイル」を開き、「Time Price Opportunities」を選択することでも表示できます。
Premiumプランはマーケットプロファイルの他にも出来高プロファイルやチャートパターンの自動描画、秒足、最大8画面分割、4倍量のヒストリカルデータなどTradingViewで使える機能が全開放されます。
月額料金はそれなりの金額ですが必要に応じて検討してみてくださいね。ちなみに、国内のFX会社や証券会社の中には有料プラン相当の機能が無料で使える会社もあります。
マーケットプロファイルの見方&使い方
では、トレーディングビューのマーケットプロファイルの見方を解説していきます。
マーケットプロファイルではブロックが表示されます。このブロックは指定時間が経過すると1つ生成されます。
デフォルトでは30分ですが、トレーディングビューでは1時間、2時間、4時間も設定可能です。FX市場など24時間開いている市場ではブロックの生成時間を長くすると数を抑えられます。
ブロックには「大文字A~Z」と「小文字a~z」のアルファベットが割り振られます。例えば、指定時間の30分が経過するとAのブロックが生成、次の30分が経過するとBのブロックが生成される仕組みです。
同じ価格帯で指定時間が経過した場合は右隣りにブロックが積み重なります。
横軸で見てブロックが多く重なっている価格帯は、それだけレートの滞在時間が長いことを示します。
指定時間中に価格変動があると、変動幅に応じて同じ文字のブロックが縦に生成されます。
縦軸で見て同じ文字のブロックが多くある場合は、価格変動が大きいことを示します。ちなみに、ブロックの色は特に意味がありません。パラメーター設定で自由に変更可能です。
TradingViewの公式サイトやセントラル短資のYouTube動画でもマーケットプロファイルの見方が解説されているので合わせてご確認ください。
【YouTube】セントラル短資:第30回:マーケット・プロファイル
POC:ポイントオブコントロール
上記の基本的な見方を踏まえつつ、トレーディングビューのマーケットプロファイル用語を解説していきます。
まず、一番重要なのが「POC:ポイントオブコントロール」です。POCはブロックが最も多く積みあがった価格帯のことです。
マーケットプロファイルの計算は市場の開始から終了まで(FXであれば1セッション:1日単位)で行われます。市場が開いている時間の中で最も滞在時間が長い=多くの市場参加者が意識する価格帯と考えられます。
この価格帯では取引が集中しやすくサポートライン、レジスタンスラインとして意識され利益確定、損切りの目安にもなります。
POCを基準として上に積みあがったブロックと下にあるブロックの数を比較することで買い勢力と売り勢力のどちらが優勢なのかを判断することも可能です。
POCの下にブロックが多い場合→出来高を伴いながら上昇→高値の攻防(レジスタンス)でPOCが形成=買い相場とみなします。逆の場合は売り相場です。
ちなみに、マーケットプロファイルは市場が終了した後に計算するため翌日以降の売買判断に活用する指標です。当日中に利用するものではないのでご注意ください。
VA:バリューエリア
バリューエリアとはPOCを中心に当日出来高の約70%が集中している価格帯のことです。
「1日の値動きは6~7割の確率で中心から第一標準偏差(±34.1%)に収まる」という考え方(正規分布曲線、ベルカーブ)をもとにバリューエリアを表示します。
この標準偏差はFXで有名なボリンジャーバンドの1σ(シグマ)と同じ考え方です。
通常時の相場環境でバリューエリアの上限(VAH:バリューエリア・ハイ)、下限(VAL:バリューエリア・ロー)をブレイクした際に逆張りをするのも戦略の1つです。
IBR:イニシャルバランスレンジ
イニシャルバランスレンジは市場の開始から最初のNブロックが表示されるまでの価格帯のことです。
トレーディングビューでは縦線で表示され、パラメーター設定で調整も可能です。
本来は取引時間が限定されている先物市場で最初の1時間がその日の値動きの方向性を決める上で重要な要素となるため表示するものですが、TradingViewではより幅を持たせた初期設定となっています。
この価格帯をどちらにブレイクするかに注目します。
TPOミッドポイント
TPOミッドポイントはマーケットプロファイル内の最安値と最高値の平均値です。純粋に価格の平均値であり、ブロックの数は考慮されません。
シングルプリント
シングルプリントはマーケットプロファイルの上端、下端にできる1つだけのブロックを指します。
当日の値動きにおいて避けられた価格=上端は売り勢力が強く、下端は買い勢力が強いことを示します。
特に、マーケットの寄り付きでシングルプリントを付けた場合、強いトレンドが発生している可能性が高く、売り買いの方向性を決める要素になります。
前日のマーケットプロファイルからシングルプリントの価格帯で当日に逆張りを狙うのも戦略の1つです。
マーケットプロファイルの分布
次に、マーケットプロファイルの分布について解説します。
相場には大きく分けて当日中に取引を行う短期トレーダーと中長期でポジションを保有する長期トレーダーの2パターンに分けられます。
短期トレーダーは当日中にエントリーポイントを見つけ、決済を行うため取引の大半をバリューエリアの中で行う傾向があります。
逆に、長期トレーダーは当日の値動きよりも長い時間軸で相場を捉えます。したがって、バリューエリアの外で取引が活発に行われている場合は長期トレーダーが市場をけん引している可能性が高いと判断されます。
この短期トレーダーと長期トレーダーの動向を見るのがマーケットプロファイルの分布です。以下では、いくつかの典型的なパターンを紹介します。
通常時の分布
通常日の分布では、ブロックの大半(約85%)がバリューエリアおよびイニシャルバランスレンジの中にあります。
市場は短期トレーダーが支配的なので価格は一定のレンジ(適正価格)の中に納まりやすくなります。形状は山なりです。
通常変動日の分布
通常変動日の分布は長期トレーダーの動きが活発なときのパターンです。長期トレーダーはより長い視点で適正価格と判断できる水準までポジションを保有します。
多くの長期トレーダーが買い目線の場合、買い手と売り手の数が等しくなり始めるところまで価格は上昇します。このときの上昇幅は短期トレーダーが手出しできない範囲に及びます。
形状は平たく縦に並びバリューエリアの外側にブロックが多く分布します。
トレンド日の分布
トレンド日は長期トレーダーの動きが最も活発になるパターンです。イニシャルバランスレンジの2倍以上の値幅に拡大します。
長期トレーダーが新たな適正価格と思える水準まで価格は広がり続けます。このとき市場はマーケットプロファイルの端で引けます。
短期トレーダーと長期トレーダーの動向が分かると相場のトレンドの強さ、どの水準まで上昇または下降するのか、サポート・レジスタンスの目安を付けることができます。
マーケットプロファイルだけで勝てるほど相場は甘くないかもしれませんが、他の分析方法とは違った新しい相場の見方、捉え方を示してくれます。
気になった方はぜひ自分の相場分析に取り入れてみてください。新しい洞察が生まれるかもしれません。
マーケットプロファイルのパラメーター設定
トレーディングビューのマーケットプロファイルは細かいパラメーターを調整することが可能です。
セッション(取引の開始から終了まで)は「期間」で、ブロックの生成時間は「Block Size」で指定します。
Rows Sizeは行間の設定なのでAutoで問題ありません。バリューエリアの初期設定は70%ですが任意で変更が可能です。
スタイルでは、ブロックのカラーや文字の表示/非表示が切り替えられます。
「VAH」はバリューエリアの上限、「VAL」はバリューエリアの下限です。チェックを入れると表示されるのでこちらも必要に応じて表示/非表示を切り替えてみてください。
最後に出来高プロファイルの表示/非表示も設定が可能です。
出来高プロファイルは価格変動をヒストグラムで視覚化したインジケーターです。
マーケットプロファイルとの違いは横軸(時間的要素)の概念がない点です。縦軸(価格変動)のみを計算し、売りと買いの比率を示します。
どの価格帯で一番出来高が多いのか、売りと買いの比率はどうなのかを一目で確認できます。
出来高プロファイルもマーケットプロファイルも重要な水準(POC)はほぼ一致します。
表示方法もマーケットプロファイルと同じでインジケーターの追加画面から「テクニカル」→「プロファイル」で表示できます。
出来高プロファイルであれば、Essential(月額2,200)プランでも利用可能です。
どちらでも使いやすい方を使ってもらえればと思います。TradingViewは他にも数々の機能があります。当サイトでは隅々まで徹底的に解説しているので各特集ページもぜひご一読を。