「原油を取引したいけどCFDとETFどっちがいい?」
この記事では、そんな疑問にお答えします。原油のCFD取引もETFもそれぞれにメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いということは難しいですが、それぞれの違いを知れば自分にとって最適な取引方法が見つかるかと思います。
取引にかかる注意点やおすすめの証券会社についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
原油のCFD取引とETFについて
まず、原油のCFD取引とETFの概要について簡単に解説していきます。
原油のCFD取引
CFDとは「Contract For Difference」の頭文字を取った略語で、日本語では「差金決済取引」という意味です。
日本ではCFDに先駆けてFX(Foreign Exchange:外国為替証拠金取引)が広く浸透しました。外国為替の通貨ペアで差金決済取引を行うのがFXなので、FXもCFDの1種です。
原油のようなコモディティ(商品)銘柄でCFD取引を行う場合は商品CFDと呼ばれます。
原油は現物の受け渡しを伴う先物取引が行われており、国際価格が形成されています。もっとも、一般の個人投資家が原油の先物取引に参加するにはハードルがかなり高いです。
一方、個人投資家でも簡単に原油の取引ができるのがCFD取引です。CFD取引では原油先物の価格を参照したレートを使って、FXと同じ要領で原油のトレードが可能です。
CFD取引はアセットクラスごとに最大レバレッジが規定されており、商品CFDでは最大20倍のレバレッジをかけることが可能です。レバレッジをかけることで資金効率を高め、少額の投資資金でもより大きな額面の取引ができる方法になります。
原油のETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)は東京証券取引所や米国のニューヨーク証券取引所などに上場されている投資信託です。通常の投資信託は証券会社の窓口で購入しますが、ETFは上場されているため株式と同じように取引が可能です。
投資信託と比べて取引コスト(売買手数料、信託報酬)も低く、SBI証券や楽天証券のようなネット証券を利用すれば誰でも簡単に買い付けを行うことができます。
取引単位も小さく原油ETFであれば1口あたり約3,000~5,000円程度から投資が可能です。原油のETFであれば、国内では「WTI原油価格連動型上場投信(1671)」、米国では「ユナイテッド・ステイツ・オイル・ファンド(USO)」などが人気の銘柄です。
原油CFD、ETF、投資信託の違い
取引方法 | CFD | ETF | 投資信託 |
---|---|---|---|
取引期限 | なし | なし | 商品による |
価格変動 | リアルタイム | 市場開場中 | 1日1回 |
空売り | 〇 | ベア型ETFの購入 | × |
注文方法 | 多い | 普通 | 少ない |
レバレッジ | 最大20倍 | 基本は1倍 | × |
取引コスト | 低い | 低い | 高い |
手数料 | スプレッド、各種調整額 | 取引手数料 信託報酬 | 取引手数料 信託報酬 |
原油のCFD取引、ETF、投資信託の大まかな違いは上記の通りです。
注目ポイントとしては「CFDは価格変動がリアルタイム、ETFは市場が開いている時間」、「CFDは空売りが可能、ETFは別途ベア型ETFを購入する」「CFDは最大レバレッジが20倍、ETFは基本的に現物」、「取引コストが違う」という点です。
以下では、この違いについて原油CFDとETFのメリット・デメリットとして解説していきます。
原油CFD取引のメリット・デメリット
最大20倍のレバレッジで少額からでも取引がスタート可能
取引手数料が無料、少額の場合はスプレッドコストも安い
取引方法が分かりやすく売買しやすい、要領はFXと同じ
取引時間が長い、ほぼ24時間いつでもポジションが持てる
CFD取引の大きなメリットは最大20倍のレバレッジがかけられるという点です。レバレッジをかける分だけ資金効率が高まるため、少額の資金からでも大きく利益を狙うことができます。
また、GMOクリック証券のようにCFD取引は全銘柄で取引手数料が無料の証券会社もあります。取引コストについては以下で詳しく解説しますが、少額であればコストも低く抑えることが可能です。
ETFと比較した場合では、取引方法が分かりやすく売買しやすいというのもメリットです。FX経験者の方であれば、取引の要領は同じなので理解しやすいかと思います。
取引時間に関しても、CFD取引であれば取引時間が長くほぼ24時間いつでもすぐにポジションを持つことが可能です。GMOクリック証券では平日の月曜〜金曜午前8:00-翌午前7:00(標準時間)で取引ができます。
資金管理、ポジション管理を徹底する必要がある
投資資金以上の損失が発生する場合がある
価格調整額の受け払いがある
逆に、デメリットとしてはレバレッジをかける分だけハイリスクハイリターンになるという点です。原油相場はFXや他の商品と比べてもボラティリティがかなり高い市場です。
1日で数パーセントの変動、ときには10%以上動く場合もあります。ボラティリティの高い相場にレバレッジをかけて取引するため、投資資金に対するポジション量には注意が必要です。
また、相場の急激な変動が起こった場合、投資資金以上の損失が発生する可能性があります。この点に関しては各社ともにロスカット制度が導入されており、一定の証拠金率を下回った場合はポジションが強制決済されます。
ロスカットは投資資金以上の損失が発生するのを防ぐ制度です。余程のことがない限り、ロスカット以上の損失が発生することはありませんが、そうした可能性があることは理解しておく必要があります。
最後に、原油のCFD取引では価格調整額という取引コストが発生します。詳しくは別記事で解説しているので、気になる方はご一読ください。
原油ETFのメリット・デメリット
国内ETFは取引コストが低い
投資資金以上の損失は発生しない
一般NISA枠でETFを購入すれば非課税になる
次に、原油ETFのメリットについてですが、取引コストが低いのが特徴です。特に国内ETFは株式と同じ取引手数料で購入できるためコストを抑えることができます。
特に、100万円以上の資金で発注を行う場合はCFDと比べて大きく差が出てきます。また、ETFはレバレッジをかけない現物取引となるため投資資金以上の損失は発生しません。
ただし、銘柄によっては2倍のレバレッジをかけた原油ETFもあります。ETFは選ぶ銘柄によって値動きやパフォーマンスが変わる点にはご注意ください。
もう一つのメリットとしては一般NISA枠で買い付けができるという点です。NISAを活用すれば利益が出た分の税金は非課税となります。逆に、CFD取引は申告分離課税で約20%の税金が発生します。
レバレッジがかからないため投資効率が悪い
CFDと比べると売買がしにくい
米国ETFは取引コストが高い
銘柄が複数あり、銘柄を選びにくい
原油ETFのデメリットとしては、資金効率が悪いという点です。原油はETFでもCFDでも長期保有に向かない銘柄です。長期保有するほど価格調整額が発生するため、基本的にはデイトレードやスイングトレードが推奨されます。
短期スパンで取引する場合、狙う値幅も狭くなるためレバレッジをかけなければ効率が悪くなります。本来、ETFは現物でじっくりと長期スパンで値上がりを狙うのが基本ですが、原油ETFに限っては長期保有が推奨されません。
また、短期トレードをする場合は売買のしやすさにも注意が必要です。狙った価格ですぐに売買できるかどうかは損益に直結します。ETFは売り買いがCFDと比べてしにくいのもデメリットです。
原油CFDとETFの取引方法、コスト、チャートについて
次は、上記で解説した原油CFDとETFのメリット・デメリットについてより踏み込んで解説していきます。
原油CFDはすぐにポジションを持てるため売買がしやすい
上記はGMOクリック証券の原油CFDの取引画面です。原油CFDの取引方法は簡単で「売り/買い」「注文方法」「取引数量」の3つを選択すればすぐにポジションを持つことができます。
注文方法に関しても成行・指値/逆指値・OCO注文、IF-DONE注文、スピード注文など多彩な注文が可能です。
一方、ETFはCFDと比べて取引がしにくい点に注意が必要です。ETFは取引所取引なので東証で上場されている売りと買いがぶつけられた価格で取引を行います。
自分が狙った価格で約定するかどうかは板次第です。一方、CFD取引は店頭取引なのでFX/CFD業者が取引の相手方となります。指値/逆指値はもちろん、スピード注文も利用できるため狙った価格でポジションを持ちやすいのが特徴です。
原油CFD、原油ETFの取引に必要な最低資金
■ GMOクリック証券/WTI原油:最小1ロットあたり・・・5,200円(2023年7月5日時点)
■ 楽天証券/1671:単元株数1株/口・・・2,510円(2023年7月5日時点)
■ 楽天証券/USO:単元株数1株/口・・・63米ドル/約9,000円(2023年7月5日時点)
各社の取引に必要な金額は上記の通りです。
1注文あたりでは原油CFDとETFでは大きな差はありません。米国のUSO(ユナイテッド・ステイツ・オイル・ファンド)が若干高いくらいです。原油CFD、ETFともに1万円もあれば投資がスタート可能です。
原油CFDとETFの取引コスト比較
項目 | CFD(GMOクリック証券) | 国内ETF(楽天証券) | 米国ETF(楽天証券) |
---|---|---|---|
取引コスト | スプレッド:0.03(※) | 取引手数料:55円~535円 | 取引手数料:0.495% (上限:22米ドル) |
資金10万円 | 10ロット:約400円 | 往復:198円 | 往復:990円 |
資金50万円 | 50ロット:約2,000円 | 往復:550円 | 往復:4,950円 |
資金100万円 | 100ロット:約4,000円 | 往復:1,070円 | 往復:5,720円 |
※GMOクリック証券のスプレッドは相場状況によって変動します。最新情報は取引ツールをご確認ください。
※楽天証券の取引手数料(国内ETF)は超割コースの現物と取引手数料を掲載。表示はすべて税込み。
※楽天証券の取引手数料(米国ETF)は約定代金が2.22米ドル超~4,444.45米ドル未満の場合は約定代金の0.495%(税込)、4,444.45米ドル以上は22米ドル(税込)が上限となります。
取引コストに関しては、CFD取引はスプレッド、ETFは売買手数料がかかります。CFD・ETFともに一定の期日を迎えると価格調整額が発生しますが、ここでは価格調整額が発生しない短期トレードを前提として比較しています。
取引コストでは、国内原油ETFがお得ですね。取引手数料は往復で発生しますが、それでも安い手数料で購入することが可能です。米国の原油ETFは取引コストが高くなります。
一方、CFDは資金量が大きくなる(ポジション量が増える)ごとにスプレッドコストがかさみます。CFDのスプレッドは売値(Bid価格)と買値(Ask価格)の差です。
新規でポジションを建てるときにスプレッド分を支払いますが、売却時にはかかりません。支払うコストは1回分です。もっとも、CFDはレバレッジがかかるため損益の変動がETFよりも大きくなります。
狙う値幅と取引コスト、資金量に合わせて取引方法を選んでいただければと思います。
原油CFDとETFの値動き、チャートを比較
上記はWTI原油と1671(WTI原油価格連動型上場投信)、USO(ユナイテッド・ステイツ・オイル・ファンド)の値動きを比較したチャートです。
2020年2月のコロナショックからの値動きですが、WTI原油CFDの変動率が最も高くなっているのが分かるかと思います。ボラティリティが非常に高いため、短期間でも大きく利益が狙える半面、損失になるときも急激に増えるため注意が必要です。
逆に、米国の原油ETF代表格のUSOはコロナショック前の水準をいまだに回復しきれていません。ETFは銘柄によって値動きも変わります。銘柄を選ぶ際はチャートも必ず確認しておきましょう。
結論:コスト重視なら原油ETF、短期ならCFD取引がおすすめ
結論としては、「大口で取引コストを抑えて投資するなら国内の原油ETF」、「少額で資金効率を高めて短期トレードするなら原油CFD」がおすすめです。
投資資金が100万円以上の場合、CFDではスプレッドが大きな負担となります。ETFであれば、大口注文でもコストが抑えられるため利益を出しやすくなります。
逆に、100万円以下の資金ではETFの現物を保有しても資金効率が悪いため、よほど大きな値幅を取らなければ利益が出ません。原油ETFは長期保有するほど減価するため、長期スパンでの投資も難しいところ。
したがって、短期スパンでレバレッジをかけて局所的にCFDで値幅を取るのが最適です。もちろん、これは数多ある投資方法の1つなので取引方法を選ぶ際の参考にしていただければと思います。
原油CFD対応の国内FX/CFD業者を解説
次は、原油CFDに対応したおすすめの国内FX/CFD業者をピックアップして解説していきます。
GMOクリック証券
原油のCFD取引なら最もおすすめなのがGMOクリック証券です。
GMOクリック証券は全CFD銘柄で取引手数料が無料。どれだけトレードしても取引手数料は一切かかりません。
実質的なコストはスプレッドですが、GMOクリック証券はWTI原油のスプレッドも安定して狭いのが特徴です。相場状況によって変動はしますが、通常時であれば業界最狭水準のスプレッドを配信しています。
また、原油のCFD取引で注意したい価格調整額に関しても分かりやすく案内しています。価格調整額に関しては別記事で解説しています。
GMOクリック証券の原油取引ツール
GMOクリック証券は初心者から上級者まで幅広い層に使いやすい取引ツールも大きな魅力です。
特に、スマホアプリは必見。随所にこだわりの詰まった秀逸なツールに仕上がっています。
視認性の良いデザインとカラー、機能的なウォッチリスト、テンプレート保存ができるチャートなどスマホアプリとは思えないほどのスペックです。
スピード注文にも対応しているので、トレードチャンスが来たときには瞬時にポジションを持つことが可能。相場分析から発注、資金管理まで1つで完結する高機能アプリです。
その他にも注目ポイントがたくさんあるGMOクリック証券はWTI原油のCFD取引をするなら要チェックの証券会社です。
別記事では、GMOクリック証券の原油CFD取引を徹底解説しています。取引ツールの使い方、発注方法、取引コストまで分かりやすく解説しているのでぜひご一読ください。
IG証券
CFD銘柄の豊富さならIG証券がおすすめです。
IG証券では原油を含む商品CFD、個別株CFD、株価指数CFD、債券CFDと多種多様な銘柄を取り扱いしています。その総数は17,000銘柄以上です。
これだけの銘柄数に対応しているのは国内でもIG証券だけ。原油関連では北海原油、ガソリン、天然ガスなど時流に応じて注目されている銘柄をワンストップで取引できます。
IG証券の原油取引ツール
IG証券ではマルチデバイス対応のPCブラウザ版ツールとスマホアプリの2種類のツールを提供しています。
どちらのツールでもIG証券で取り扱いのある銘柄はすべて取引が可能。PCブラウザ版はインストール不要なのでネット環境さえあればどの端末でも利用できます。
IG証券のWTI原油は複数の取引方法に対応しています。円建て取引では最小0.1ロット(10バレル)から、レバレッジ20倍で必要証拠金は3,519円です。
※2024年11月1日時点。必要証拠金は取引時点の原油価格によって変動します。
取引ツールの充実度ではGMOクリック証券に軍配が上がりますが、「WTI原油以外にも色んな銘柄を取引したい」という方はIG証券がおすすめです!
楽天証券
WTI原油のETF(現物取引)とCFD取引の両方に対応しているのが楽天証券です。
上記でも解説したように、楽天証券のETFでは取引手数料がかかりますがCFD取引では手数料はかかりません(別途、スプレッドが発生)。GMOクリック証券と同じく、取引手数料を気にしないで済むのはいいですね。
楽天証券の取引ツールはMT4(メタトレーダー4)です。FXでは鉄板ツールの1つですが、MT4で原油や金といった商品CFDも取引できるのは貴重です。FXをされている方ならMT4は馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
取扱銘柄はそれほど多くはありませんが、WTI原油のETFとCFDの両方が取引できる便利な証券会社です。楽天カードや楽天銀行など楽天関連サービスを利用されている方は楽天証券をチェックしてみてください。