この記事では台湾積体電路製造(TSMC、台湾セミコンダクター)の業績、売上高、最新決算情報などを徹底特集。
莫大な設備投資を行い世界中の半導体製造を一手に担っているのが台湾セミコンダクターです。同社に投資をお考えの方も多いかと思います。
ここでは、四半期売上高/当期純利益の推移や製品別売上高、今後の見通しまで詳しく解説。銘柄選びの参考にご活用ください。
台湾積体電路製造(TSMC)の概要
TSMCは台湾のシリコンバレーとも呼ばれる新竹サイエンスパークに本社を構える半導体メーカーです。台湾セミコンダクターは「自社ブランドでの設計・製造・開発を行わない」という企業方針を持った受託製造専門の企業です。
クライアントと直接的な競合となるリスクを排除することで受託製造専門の半導体メーカーとして地位を確立しています。すでに世界の半導体受託製造(ファウンドリー)の50%以上を台湾セミコンダクター1社で担っている状況です。
台湾セミコンダクターは最先端の3ナノ・5ナノチップから量産型半導体の製造まで世界中の企業に半導体を納品しています。AppleやNVIDIAなど世界的なグローバル企業を数多く顧客に持ち、最先端の技術力と積極的な設備投資で半導体の大量生産を可能にする生産能力が強みです。
タイワンセミコンダクターの会社概要
株価(NYSE ADR) | 117.40米ドル |
---|---|
時価総額 | 608,845,333千ドル |
発行済株式数 | 5,186,076,091株 |
市場 | NYSE(ニューヨーク証券取引所) |
業種 | IT・通信 (IT & Communications) |
設立年月日 | 1987年2月 |
代表者 | Dr. C.C. Wei, Ph.D. |
※株価、時価総額は2021年4月22日時点の数値を掲載。
台湾積体電路製造(TSMC)の業績、最新決算情報
2021年4月15日、台湾セミコンダクターは2021年第1四半期の決算を発表しました。通常、第1四半期は半導体の需要が下がることから売上高が落ち込む時期になります。
もっとも、2021Q1ではHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)や車載半導体の旺盛な需要により売上高、純利益ともに好調な業績をのこしています。売上高、当期純利益の推移は以下の通りです。
TSMC:売上高/当期純利益推移
決算区分 | 2020Q1 | 2020Q2 | 2020Q3 | 2020Q4 | 2021Q1 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 310,590 | 310,690 | 356,420 | 361,530 | 362,410 |
当期純利益 | 116,980 | 120,820 | 137,310 | 142,760 | 139,690 |
決算区分 | 2019Q1 | 2019Q2 | 2019Q3 | 2019Q4 |
---|---|---|---|---|
売上高 | 218,700 | 241,000 | 293,050 | 317,240 |
当期純利益 | 61,390 | 66,770 | 101,070 | 116,040 |
※単位:百万台湾ドル(1台湾ドル=3.85円、0.036ドル、2021年4月22日時点)
※出所:TSMC「2021Q1決算データ」をもとにFX手とり作成
2021Q1の売上高は3,624億1,000万台湾ドル(日本円で約1兆4,000億円)、当期純利益は1,396億9,000万台湾ドル(日本円で約5300億円)です。前年同期比では売上高が16.7%増、当期純利益が19.4%増という結果に。
TSMCの強みは非常に高い利益率です。量産型の半導体を中心に40%近い利益率を計上しています。さらに、最先端の3ナノ、5ナノチップまで製造することで需要の変化にも柔軟に対応できる点が大きな強みとなっています。
もっとも、2021Q1では営業利益率が前年同期比17.1%増と伸び率が鈍化しています。これは、大型の設備投資を行っている影響です。同社は2021年4月7日に今後3年間で1000億ドル規模の設備投資を進めていくと発表しており、今四半期も継続して大型の設備投資に資金を投入しています。
今回の決算では、2021年から2021年にかけて半導体需要は高まり続けるとしており、下半期には営業利益率も改善する見込みです。
TSMC:製品別売上高構成比
スマートフォン | HPC | IoT | 自動車 | DCE | その他 |
---|---|---|---|---|---|
45% | 35% | 9% | 4% | 4% | 3% |
各製品別の売上高ではスマートフォン向け、HPC向け半導体が約8割を占めています。特に、天候予測・石油探査・物理学など膨大な演算処理を必要とするHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)向けの半導体が非常に好調な伸びを見せています。
前年同期比では36.1%増と素晴らしい成長率を記録。また、世界的に5Gスマホの出荷が本格化してきたことから引き続き、5ナノチップなどの最先端半導体の需要が継続する見込みです。
TSMC:製品別売上高変動率
スマートフォン | HPC | IoT | 自動車 | DCE | その他 |
---|---|---|---|---|---|
-11% | +14% | +10% | +31% | +11% | -13% |
製品別の売上高変動率では自動車向けの車載半導体が+31%と前四半期に引き続き大幅な伸びを記録。2020年の第4四半期でも+27%増となっており、他製品よりも頭が1つ抜けています。
世界的に車載半導体不足が継続しており、自動車メーカーだけでなく各国政府もTSMCに半導体製造を発注している状況です。もっとも、全体の売上高に対して車載半導体の売上高は4%に過ぎません。売上の中心はスマートフォン向けとHPC向けである点にご留意ください。
その他、HPC、IoT、DCE(データ通信装置)が2桁パーセントの成長を記録しています。スマートフォンはマイナス11%となっていますが、これはAppleのiPhone(2020年秋モデル)向けの半導体製造が落ち着いたためとみられています。
TSMC:テクノロジー別売上高
5um | 7um | 16um | 28um | 40/45um | 65um | 90um | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
14% | 35% | 14% | 11% | 7% | 5% | 3% | 11% |
テクノロジー別では5ナノ、7ナノの最先端半導体に分類されるチップが49%と半分に近い売上を占めている状況です。前四半期と比べて、スマートフォン向けの需要が減少したことから5ナノチップは減収。7ナノチップはパソコン、サーバー向けの需要増から増収となりました。
その他の半導体はほぼ横ばいで推移しています。また、半導体ウェハ(チップの材料となるシリコン素材)は335万枚(前年同期比14.8%増)と順調に増加しています。
台湾積体電路製造(TSMC)の今後の見通し
2021Q1決算ガイダンスでは、収益が129億米ドル~132億米ドル(前年同期比17.9~20.7%増)、営業利益率は49.5%~40.5%(前年同期比7.6~15.8%増)という業績予測が発表されました。
現時点では、大規模な設備投資によって営業利益率が悪化していますが、次の四半期から下半期にかけて半導体の増産体制が確立され売上に貢献する見通しです。
3ナノ、4ナノの開発も順調に進んでおり、日本に3DIC材料(3次元集積回路)研究施設を自己資本で設立すると発表。最先端の3ナノでは5ナノに比べてトランジスタ密度が1.7倍、演算速度が11%増加、消費電力が27%減少すると発表しています。
台湾セミコンダクターは半導体の受託製造だけでなく、設計(自社ブランドではない)も手掛けています。最先端チップの設計から大量生産まで一貫して行える同社は実質的な競合がいない存在となっています。
2022年も引き続き半導体不足が続けば売上はさらに増加する見通し。半導体製造で圧倒的な存在感を放つ台湾セミコンダクターは米国株式のなかでも注目すべき銘柄の1つです。
TSMC株に関するQ&A
- TSMCの株式は1株いくらで買えますか?
TSMCの株価は1株あたり114ドル(日本円で約1万2,000円、2021年4月21日時点)です。米国株式は日本株と違い1株から購入できるため、現物株式であれば1株あたり1万2,000円程度で投資できます。
以下で詳しく解説していますが、CFD取引では最大5倍のレバレッジ(株式CFDの場合)がかけられるため1株あたり約2,500円ほどで取引がスタートできます(※)。
※証拠金維持率(20%)の場合を掲載。実際の取引では資金管理とポジション量の調整に十分ご注意ください。
- TSMC株の買い方、購入方法には何がありますか?
長期的なスパンで値上がり益(キャピタルゲイン)を狙うのであれば現物取引、短期~中期スパンで売買差益を狙う場合であればCFD取引(差金決済取引)が最適です。
CFD取引に関しては別記事で詳しく解説しています。
- TSMC株を取り扱いしている証券会社はどこですか?
現物取引であれば、国内ではDMM 株、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などが対応。
CFD取引では、IG証券が台湾セミコンダクターの株式CFDに対応しています。
- TSMCの株式はどこに上場していますか?
TSMCはNYSE(ニューヨーク証券取引所)にADR銘柄【ティッカー:TSM】として上場しています。
ADR銘柄(米国預託証券)とはADR銘柄とは米国預託証券のことで、米国以外の企業の株式に簡単に投資するための仕組みです。現地企業が発行した株式を裏付けとして米国の証券取引所がADR銘柄を発行、投資家はADR銘柄を購入すれば間接的に現地企業に投資が可能です。
ADR銘柄は裏付けとなる株式から生じる経済的権利をすべて含む有価証券なので、株式を直接購入するのとほぼ同じ効果を得ることができます。
- TSMCに配当、株主優待はありますか?
TSMCは四半期ごとに配当を行っています。直近の配当利回りは1.50%(2021年4月19日時点)です。株主優待は行っていません。